自然な仕上がりを実現する 「画像の明暗差補正技術」
はじめに
デジタルカメラは、逆光など明暗差が大きいシーンでの撮影が得意ではありません。
イメージセンサーで一度に捉えられる明暗の幅は肉眼よりも狭く(専門的には「ダイナミックレンジが狭い」と表現されます)、青空が白く飛んだり、逆光の人物が黒くつぶれてしまったりと、実際に見た印象とは異なる「明暗差が大きい」写真が撮れてしまった経験は皆さんあるかと思います。
この問題を解決するために、スマホを含む多くのデジタルカメラには「暗部補正」機能が備わっています。デフォルトON設定であることも多く、知らず知らずのうちに恩恵を受けている方が多いのではないでしょうか。
本記事では、暗部補正を例に『自然な見た目を保ったまま画像の明暗差を補正する技術』を紹介します。
明暗差を補正する難しさ
暗部補正はざっくり言うと、画像の「明るい部分はそのままに、暗い部分を明るく持ち上げる」機能です。
これだけだと容易に聞こえるかもしれませんが、「明暗差が減る=ぼんやりと眠たい印象になる」であるので、シンプルに処理するだけでは締まりのない鑑賞性の低い画像を量産することになってしまいます。
何か工夫が必要です。
自然な仕上がりのコツは「局所的な明暗差」をキープすること
要は、画像の大局的な明暗差のみを補正できれば良いのです。局所的に存在する各被写体の明暗差をキープする仕組みを加えれば、自然な仕上がりの補正結果を得ることができます。
代表的な手段として、明暗差を「大局」と「局所」に分離し、「大局」にのみ暗部補正を適用する方法があります。これにより、強力な補正をかけても被写体のディテール損失を抑えられます。
下の例は、明暗差情報を丸ごと補正した例(左)と、大局のみ補正した例(右)の拡大比較です。後者の方がくっきりしていて、より自然な仕上がりになっていますね。
明暗差制御を駆使してアート作品も!
局所的な明暗差をより強調することで、あっと驚くアート作品を生み出すこともできちゃいます。
以下の作例はHDRアートと呼ばれるものです。色の強調など他の要素も入っていますが、「大局 / 局所」両方の明暗差をコントロールして、非日常的な雰囲気を作り上げています。
最後に
人の目は、色の差よりも明暗差に敏感らしいですね。
写真の印象を決める重要な要素の一つとして、明暗差により着目してみるのはいかがでしょうか。