カシオの「オモシロ時計」物語 Vol.3:腕時計で辞書がひける!“ウオーキング ディクショナリー”「T-1500」
カシオの時計事業50周年を記念して、特にエポックメイキングだった腕時計を振り返る本連載。
電卓に続き、今回は電子辞書を取り入れた腕時計の登場です!
”時に関する情報を知るための機器”から、”腕につける情報機器”という壮大なビジョンを目指して誕生しました。
抜群の携帯性を持った情報機器を目指す
「どこでも辞書がひけたらどんなに便利だろう、でも辞書を持ち歩くのは重くて面倒だなぁ」
こうした声に応えるかのように登場したのが電子辞書で、カシオからは1981年に発売されています。ただ、携帯性は劇的に改善されましたが”持ち運ぶ”という行為は、やっぱり必要でした。
そこで「腕時計に辞書を内蔵すれば、持ち運ぶ必要がなくなる!」とばかりに登場したのが、1982年2月発売の“ウオーキング ディクショナリー カシオ英和/和英デジタル”『T-1500』です。学習用という位置付けで、英単語・熟語合計1,666語とその日本語訳を内蔵し、不規則動詞の変化とその例文80組も収録されていました。
カシオはデジタルウオッチの開発にあたり、最新の技術を駆使することで”時”に関するあらゆる情報を搭載することを目指しました。
この腕時計においても、世界24ゾーンのワールドタイム機能や二つのアラーム音が選べる上にメッセージも表示するアラーム機能、そして1/10秒単位で積算・ラップ・1、2着同時計測可能なストップウオッチ機能を搭載するなど、時計としての機能もフル装備!
その上でさらなる高みを目指したのです。
腕につける情報機器としてのウオッチへ
現代の視点でみると、「時計の中にわざわざ辞書を入れなくても・・・」と思う方もいるかもしれません。実はこれ、電子辞書を腕時計サイズにする目的で作られたのではなく、「腕時計を“腕につける情報機器”に」という進化の第一歩として開発されたものでした。
情報機器を目指すには、数字だけでなく文字も扱える必要があるということで「英和・和英辞書」というわかりやすい形に仕上げたのがこの商品だったのです。
文字表示は辞書機能だけでなく、曜日表示の5ヶ国語対応にも活用されています。「腕時計に辞書が入った」と当時は話題になりましたが、“腕時計で辞書をひく”という行為は定着せず現在に至ります。
ただ、“腕につける情報機器”という目標にチャレンジするためには、“ウオーキング ディクショナリー”の開発は、必然でした。そして、このチャレンジはさまざまな機能の進化という面で、さらに加速していきます。
さて、次回は1983年です。
「あっ!」と驚くセンサー技術を搭載したモデルが登場しますので、ぜひ楽しみにしていてください!
「おもしろ時計」物語 Vol.2では電卓と腕時計の融合を目指した「カルキュレータ クロノ C-80」をご紹介しています。ぜひこちらもチェックしていただけると嬉しいです。