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”高い品質の実用時計を、手に取りやすい価格で”カシオウオッチ開発で守ってきたこと

こんにちは、カシオnote編集部です。

今年、カシオが初めて腕時計を発売してから、50年の節目を迎えます。
1974年に発売した第一号モデル「カシオトロン」以降、「G-SHOCK」「BABY-G」「OCEANUS」「PRO TREK」などのブランドが生まれ、これまで数々のモデルを発売してきました。

そのなかでも、最も歴史が長く、全世界で愛され続けているのが、”CASIO”のブランド名を冠し、巷では「チープカシオ(チプカシ)」などとも呼ばれるカシオウオッチです。
国内では、「CASIO COLLECTION(カシオコレクション)」「CASIO CLASSIC(カシオクラシック)」、海外では「CASIO VINTAGE(カシオビンテージ)」といったシリーズ名で展開をしています。

社内では、"一般時計"という呼称で通っていて、G-SHOCKなどの影に隠れて、やや地味な存在です。しかし、今回カシオウオッチの開発に長年携わってきた企画者の衣笠さんに話を聞くと、カシオが長年大切にしてきた時計づくりの原点を知ることができました。

時計BU 商品企画部 第二企画室 衣笠 裕(きぬがさ ゆたか)

CASIOウオッチの開発

ー衣笠さんは、長らくCASIOブランドの時計の商品企画を担当されてきましたが、これまでの経歴を教えてください。

衣笠:
カシオに入社したのは、1986年です。
入社して3年くらい時計のLSI開発を経験し、その後商品企画部門に異動しました。国内向けのアナログモデル担当を経て、海外向けのCASIOブランドの担当に変わり、現在に至るまで約30年間カシオウオッチの商品企画に携わっています。

―30年間ですか!これまで何モデルくらい担当してきたのでしょうか?

衣笠:数が多すぎて、正直ちゃんと数えたことはないですね・・・
形でいうと、おそらく200モデル以上はあると思います。カラーバリエーションを含めると1,000モデルはゆうに超えるでしょうね。
昔は、新しいモデルを作らないと営業が売ってくれない、みたいな強迫観念で作っていた時もありました(苦笑)

お店で目に留まるかどうか、がすべて

―衣笠さんが、カシオウオッチを企画するうえで、心がけていることはどんな事がありますか?

衣笠:G-SHOCKなどと違って、カシオウオッチは広告を出したり、積極的な宣伝をしないラインです。それなので、店頭に並んだ時にお客さまの目に留まって、手に取ってもらえるかどうかがすべてです。
競合他社の時計もひしめく中で、ただお店に置いてあるだけで、そのモデルを選んでもらえるよう、価格、スペック、デザインでの差別化要素つまりエッセンスを個々のモデルへ吹き込み、モデル自身がそれを伝えられるための商品づくりを常に意識しています。

―ただ置いてあるだけで選ばれる時計ですか・・・

衣笠:カシオウオッチは海外の方が圧倒的に売れているのですが、価格と質感、品質がなによりも重要な要素です。
品質が良いうえに、手に取りやすい価格帯のモデルをつくるため、かなりコスト管理は徹底していますね。価格はできるだけ上げないよう、限られたコストの中で商品をつくることに一番苦労しています。コストアップを避けるため、日々シビアに関連部門と調整を重ねています。

価格へのこだわり

例えば、海外では型番そのものがブランド名になっているくらいロングセラーの「F-91W」というモデルがあります。1989年から発売されていて、国内だと2,000円くらいのモデルなのですが、発展途上国では、これを一生ものの時計として買っていただいている方もいるんです。

ロングセラーのデジタルモデル「F-91W」

デジタルといえばカシオ、という信頼性に加えて、防水性もあって、価格とのバランスで幅広く支持されている、いわば神モデルともいえる存在です。一生ものの時計、として買ってくださるお客さまのためにも、このモデルに限らず、できるだけ価格は維持できるように努めています。

目指すのは”エブリディウオッチ”

―カシオウオッチで、デザイン面でのポイントはありますか?

衣笠:カシオウオッチは、エブリディウオッチ=毎日使ってもらえる実用時計、を目指しています。カシオのデジタルウオッチのひとつのアイコンでもある八角形のフォルムのシンプルデザインを筆頭に、スポーティー、ヘビーデューティーなど使う人それぞれのライフスタイルや嗜好にマッチするバリエーションを取りそろえています。

なにより、どのモデルも時間を知るため、実用的に使ってもらうために時計として使いやすいデザインにこだわっています。

―これまでで、一番思い入れのあるモデルは何でしょう?

衣笠:色々ありますが、1996年発売の「W-87」ですね。
当時、カシオは市場でかなり苦戦していた中で発売し、世界的に大ヒットした起死回生のモデルです。
同じ価格帯の競合モデルに勝つため、当時はELライトが時代のトレンドだったのですが、ライトの存在感を分かりやすく示すために、大きく押しやすいライトボタンをフェイス下の目立つ場所に配置しました。

ライトボタンを目立たせた「W-87」

店頭で並んでいるだけで、時計そのものが訴求したい価値を伝えられて、お客さまに選ばれる時計づくりをしないといけない、という事を学ばせてもらったモデルです。

―これまで担当してきたモデルにまつわる、嬉しかったエピソードを教えてください。

衣笠:国内でも海外でも、自分が企画担当したモデルを着けてくれている方を見かけると、一人一人にお礼を言いたい気持ちです。
実際に言葉で伝えることはできませんが、心の中ではいつも「ありがとうございます」と言っています。

ー最後に、カシオウオッチへの想いを聞かせてください。

衣笠:30代くらいの頃、当時の役員と対談をする機会があって、その時話したことが、「カシオの時計を全世界であまねく売りたい。しっかりした品質の実用時計、安くていいものを、世界のどこでも売ってもらえて、買った人が安心して使える時計をつくりたい」と。
その気持ちが、今まで変わらずずっと続いているからこそ、カシオウオッチをつくるこの仕事が好きなんだと思います。

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